痛みなき最期知って
北海道新聞 2012年4月2日より抜粋
末期がん患者らに対し、ホスピスケア(緩和ケア)は治療より、痛みやストレスを和らげることに重きを置く。
「在宅ホスピス」に取り組む山梨県の医師、内藤いづみさんの講演会が6月に苫小牧市内で開かれる。講演会を企画した市内の主婦、松本昌恵さんは、父親の死に直面した経験があった。
-お父さんの死に際し、苦しい経験をなさったようですね。
「私が36歳の時、父が肝硬変で亡くなりました。死の直前、お医者さんから「心づもりを」と言われ、家族そろって父を囲んでいました。ところが、父が苦しみ出すと、家族は室外に出され、治療が始まりました。病室をのぞいてみると、お医者さんが父に馬乗りになってすごい力を入れて心臓マッサージで胸を圧迫したり、電気ショックを与えていました。どうしてあの時お医者さんに「そのまま様子を見てください」と言えなかったのか。
でも、当時の私に、そんな見送り方があるなんて知識はありませんでした」
-その後、内藤さんと出会ったのですね
「内藤さんはホスピス発祥の英国で学び、日本に広めたいと帰国し、故郷の山梨で病院を開いています。札幌などで講演を聞きましたが、常に家族などではなく、思者の目線に立っているんです。痛みをどうしたらいいか、居心地が良い所はどこか、何をしたがっているか。「いつでも電話を」と携帯番号を教えてくれるお医者さんはいますが、内藤さんは「患者さんはとても医者に電話なんてできない」と考え、自分から定期的に電話している。私の1歳下なのですが、すごいなって感じています」
一講演会を企画したのは。
「父が死の直前まで『こわい(しんどい)、こわい』と言っていたのが、今でも耳に残っています。(ホスピスケアを)知っていれば、「家族で見守らせてください」と言えたのに。きっと、父と同じように、痛みを恐れている人がいるはず。講演会を通じて、病院だけでなく、在宅で痛みのない最期を迎えることができるなど、いろんな選択肢があることを知ってほしい。死の話をすると、『縁起でもないと言われますが、死を見つめてこそ、生きることの大切さが感じられると思うんです」
<略歴>まつもと・まさえ
苫小牧市出身、苫小牧酉高卒。2男の母で、被爆者の講演会なども開いている。内藤さんの講演会は6月15日午後6時半から苫小牧本町1のアイビーブラザで。500円。
問い合わせは松本さん09069952701へ。