終末期こそユーモア大事に
在宅ホスピス医の内藤いづみさん(甲府市)と淀川キリスト教病院(大阪市)名誉ホスピス長・柏木哲夫さんとの対談をまとめた「最高の一日最良の最期-やっぱり病院! それとも在宅?」(佼成出版社、1470円)が出版された。
ホスピスケアにはユーモアも大切。
在宅と病院それぞれの立場でホスピスケアを実践してきた二人が、患者とのユーモアあふれる触れ合いを交えながら、終末期の命の輝きや、ホスピスケアの心について語り合っている。
収録しているのは2009~10年に行われた3回の対談。日本のホスピス医の草分け的存在である柏木さんは、内藤さんにとって『いつも前にいる尊敬する存在』。対談は打ち合わせをせずに、気持ちをぶつかり合わせたという。
内藤さんは在宅、柏木さんは病院で、それぞれホスピスケアを実践してきた。その中で二人が感じていることは、ユーモアの大切さ。患者を励まし、医療者を慰めるという。対談では、二人が「患者自慢」を繰り広げながら、終末期患者との笑いにあふれたエピソードを紹介している。
「『にもかかわらず笑うこと』はとても大事。死に対して別の視点から見ることができ、心に余裕ができる。死を目前にした厳しい状況の中でも、ユーモアで切り返す力を待った医師が増えてほしい」と内藤さんは話す。
対談では、患者と医療者が対等な立場で向き合うことの大切さや、死に対する準備がしにくい医療の現状、その人が存在する意味などを含めた「いのち」そのものを診る医療の必要性なども語っている。
「死は誰にでも必ずやってくるもの。本を通じて私たちの体験を追体験してもらい、死は敗北ではなく、恐れる必要はないということを伝えたい」 「最高の一日~」には、内藤さんと柏木さんが、ホスピス医に必要な人間力やみとりについてまとめたエッセーも掲載している。