命支え合う社会づくりを
その人が望む形のホスピスケア(終末期医療)を広めようと、甲府市の在宅ホスピス医・内藤いづみさんが12月、ホスピスについて総合的に学び、地域に広める人材を育成する「ホスピス学校」をスタートさせる。年に2回程度、医療にとどまらない幅広い分野から講師を招き講義を行う計画で、「命を支え合う社会づくり」を目指す。
(山梨日日新聞2011年11月18日)
内藤さんによると、ホスピスには医療者だけでなく、患者の意思や家族ら周囲の人々の共通認識と協力が不可欠になる。高齢化で在宅ケアの必要性は高まっているが、誕生も死も病院で迎える人が多い今、命や死に触れる機会は少なく、ホスピスの理念は広まっていないという。
「医師に管理されるのではなく、命を患者の手に取り戻すのがホスピスの考え方。終末期は自分自身や家族と向き合い、大切なものに気付くための時間だが、医療か発達した分、苦しい治療を続けながら最期を迎える人も少なくない」
と内藤さんは話す。
核家族化や単身世帯の増加などで、患者を支える家庭や地域の力が弱まっている現状もある。内藤さんがホスピスケアを学んだ英国では、多くのボランティアが関わり患者を支えているといい、ホスピス関係者の間では、日本でも市民がもっと関わることが期待されている。
ホスピス学校では医療のほか食や環境、ホスピタリティー、心のケアなどさまざまな角度から、命との向き合い方を学び、理解を深めていく。開催は県内で年に2回程度。講師には医師や薬学博士、心理学者をはじめ、児童文学者、映画監督、環境保全活動家らを想定している。
第1回は12月7日に北杜市高根町内で、宿泊施設「森のイスキア」 (青森県)を主宰する佐藤初女さんを講師に招き開催する。「いのちの声を聴く 心をほぐす食の力」をテーマに、悩みを抱えた人々の話を聞き、手料理を提供することで多くの人の心を救ってきた佐藤さんが講演し、内藤さんとの対談を行う。佐藤さん秘伝のおむすびの作り方を学ぶワークショップも開く。
内藤さんは「最期に笑顔で大切な人に『さようなら』や『ありがとう』が言え、家族も後悔のないみとりをするためには、勉強や準備が必要。命を温かく見守り、互いの命を大切にする社会づくりの輪を広げていきたい」と話している。
12月7日は午前10時から開校。午前の部は佐藤さんの講演と映画上映、対談が行われ参加費3千円(定員100人)。ワークショップが開かれる午後の部は夕食代込みで1万円(11月20日締め切り、定員20人)。
参加費は学校の運営や「森のイスキア」への寄付に充てられる。
問い合わせは同学校事務局、電話090(9231)0943(田丸さん)、080(2129)8068(山下さん)。