開催報告

開催報告 2010年10月30・31日 秋田

101109_02.jpg地方での講演が続く。内心地方巡業だと思っている。重症患者さんたちが落ちついて下さってとてもありがたい。10月30日、31日は秋田県能代市山本郡医師会のまねきで秋田能代市へ。台風をかいくぐってずっといい天気。広報の石川さんからのレポートにて開催報告いたします。


 1日目は土曜日の午後で、当日はこの季節では珍しく良い天気に恵まれました。
手狭な会場でしたが立ち見が出るほど大勢の医療関係者が集まり、先生のお話をうかがう機会を熱望していた100余名の参加者がご講演を拝聴致しました。顔ぶれは看護師などコメディカルが圧倒的に多く、期待に胸ふくらませてお待ちしておりました。
 内藤先生のご講演の前に、少々時間を頂きまして地元のがん拠点病院の緩和ケアチームの取り組みについての紹介を発表させて頂きました。ホスピスケアとして第1例であり、医師・看護師・薬剤師の視点から試行錯誤ながら比較的順調にいけたのではと、それぞれコメントしましたが、質疑応答の中で、早速内藤先生から疼痛緩和ケアに対するご経験とその理念について実践的な貴重なアドバイスを頂きました。経験の浅い当地域の実情ですが、幾つか重要な点をご指導頂きまして、参加者一同すでに講演に入ったかのように聞き惚れていたように思われました。
 そして、いよいよ先生の特別講演です。
「在宅ホスピスから学んだこと~生きていくこと、支えること~」
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 はじめに、先生ご自身がホスピスを始められるきっかけとなった研修医時期のことやイギリスにホスピスケアを勉強に留学されたこと等をお話し下さいました。当時の医療では、末期?進行がんの患者さんが、自分の家で過ごしたいとか最後の願いがかなえられる状況ではなかったとのことで、受け持たれた患者さんとのやりとりの中から、先生の現在に繋がる思いやり優しさあふれるものが感じられました。
 また全国各地でご講演される内藤先生ですが、まだ訪れていない所が数カ所有り、そのうちの一つが秋田とのことで、今回医師会としてもお越し頂きましてうれしい限りでした。地元の新聞記事にもしっかり目を通されて、秋田県が長年がん死亡率が全国一であることや、自殺率も高いことにも触れられ、私達以上に地域の現状と問題点を鋭く指摘され本当に驚きました。
一方ホスピスケアではユーモアや笑いを大事ですよと話され、それまで会場全体が緊張していましたが、ジョークを交えてのトークで大いに笑わせて頂き、これならご当地は大丈夫でしょう、とリラックスさせて頂きました。そしてこれまでの講演や対談の中から幾つか印象的なことを紹介して頂き、とりわけ柏木先生とのお話からホスピスでは患者さんとの関係は上下のない、患者さんによりそう平等なものでないといけないと強調され、医療者側の基本的な心構えを教えて頂きました。
 次に、これまでの患者さんとの出会いの実際を幾つかスライドで紹介して頂きました。患者さんの背景、家に戻られる状況、ご家族の対応について、特にしておくべきことや、年齢に関係なく家族みんなでささえて、安らかに迎える、亡くなった後のことについて、詳細にお話し下さいました。その中で医療者側の留意すべき事、とりわけ痛みをきちんと緩和する事の重要さについて強く語られました。
 スライドの中の患者さんたちの笑顔はホスピスを受けられていると思えないほど魅力的で生き生きとして、またご家族の表情も自然体に見えました。そしてご家族とのやりとりから、亡くなられた後も内藤先生と強く繋がっていると知ることができ、参加者一同大いに感動し、思わず涙ぐむ看護スタッフ達が大勢おりました。
 
 まとめとして、講演で何度か触れたように、がんの身体の疼みを緩和することが在宅緩和ケアの第一歩であり、そしてそれを成功させるための大事なポイントを解説して下さり、十分な信頼関係、病状、副作用への細やかな対応などが柱になり、安定期でのスタッフの冷静な観察と、後手に回らないように変化へ迅速な対応の体制をとることを挙げられました。またがん患者さんの所謂4つの痛みの裏側にある、ケアをする側(医療側・ご家族)の痛みへの対応、そのケアもホスピスを続けていく上でカギとなる事を指摘され、臨床動作法による肩こりのリラックス法を教えて頂き、ここでも先生から癒して頂き、真面目すぎる?秋田県民がさらに深刻にならないようにと諭して下さいました。
 最後に動画での家族の見守りをご紹介頂き、それらから頂いたいろいろなメッセージを講演などで伝えていきたいとの事でした。とりわけ秋田県の現状をご心配頂き、自分の健康を保つためにユーモアと、“そうそう”と肯定する余裕を持つこと、また人間の尊厳には、生きたい・学びたい・仲間を作りたい、という気持ちが柱になりますよ、そしてこの分野のネットワークを進めていく上でも、大切な仲間を作って下さいね、とご講演を締められました。あっという間の短い時間ではありましたが、私たちはホスピスの根幹に関わる非常に多くの大切なものを教えて頂いたように思われ、大きな拍手で会は閉じられました。
翌日の日曜日も良い天気に恵まれ、午後より同じ会場で開催されましたが前日より遙かに多い170名の市民が集まり、会場から人があふれました。
市民公開講座
「在宅ホスピスから学んだこと~いい医者、いい患者、いい老後~」
          ふじ内科クリニック 院長   内藤いづみ 先生
はじめに、昨日当地に来られて早速能代の食べ物や景勝地にご興味をもたれたことを話され、ご出身の山梨(富士山と白神山地など)とユーモアを交えて比較したり、5つの健康の秘訣、20年以上前と現在の特に生死についての考え方の変遷と、イギリスでのご経験などを紹介されました。そしてホスピスの本来の形について、その第一歩として患者さんの笑顔のためには、いい医者、いい看護師、いい・・~の繋がりを持ちましょうと話され、聴講した市民の皆さんはすっかり先生の話に魅了され一つ一つ頷かれていました。
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次に研修医時代のことや、受け持ちの末期がんの患者さんの願いで、その家族と在宅緩和ケアを行い、命を支えることの大切さ、大変さを学んだことを語られました。さらに米作りが生き甲斐で亡くなる直前に収穫ができた男性や、ユーモアあふれる女性が家族に見守られ感謝して最後を迎えたこと、一度は昏睡状態になりながら家族に別れを告げ安らかに旅立った男性などを紹介され、がんの痛みを取り除いて安らかな状態で家族に「ありがとう」「ごめんね」そして「さようなら」と伝えることで最後までより良く生きられる、のではと語られました。
まとめに患者さんと家族との別れの動画を紹介され、その患者さんと撮影担当者とのやりとりから死と新しい命の誕生という、命の輪を繋ぐことの大切さを語られ、会場の方々も先生の言葉で感激のあまりどよめきが起こったほどでした。そして終わりに内田鱗太郎さんの絵本「泣きすぎてはいけない」を先生が朗読されると、場内は感動の嵐に包まれ、涙で言葉に詰まった座長の先生の挨拶で、すばらしい講演会は閉じられました。
遠い所での2日間のご講演で大変お疲れだったのではと思いますが、優しさとバイタリィーあふれる内藤先生のご講演に医療者も市民も大いに感動とパワーを頂きました。今後、地域全体で在宅ホスピスへの理解が深まるよう、様々な分野の方々と連携が進むことを期待したいと思いました。本当にありがとうございました。
(以上、秋田県能代市山本郡医師会石川さんからのレポート)


(いづみ先生より)
永六輔さんの蕉陶のおかげで?なるべく地域のみなさんのお役にたつよう働いたつもりだ。
つまり、、、土曜日は医療専門家にむけての講義。
そして日曜日は市民公開講座、というふたつ続けてのスケジュール。
いづれもみなさん熱心に参加してくださった。
私と永さんの新刊がテーマだった。
「いい医者 いい患者 いい老後」
いい医者、いいナース、いいケアマネ、いいヘルパー、いい保健師、いい薬剤師、そういう人達が集まって、いいいのちのサポートをしようと努力している。
「いい患者」の方は、いい家族、いい近所、いい友人とのいのちのネットワークを作って自分のいのちの主人公としてがんばってもらいたい。
その先に「いい老後」があるということをお伝えできたかどうか。
2日間の忙しい日程をぬって、主催者のおひとりの先生におそわり、白神山地に近い漁港まで行った。
夫の大好物のイカを買った。
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「福寿草」というお店の手作りの魚介類はどれもおいしい。
静かな日本海をながめるいさり火舟の露天風呂にもチャポンと。
神さまからのプレゼントのようにすてきなひとときだった。
どの土地にも乗り越えてきた歴史があり、今がある。出会ったみな様に心より感謝申し上げる。