今日のつぶやき

芳年展にて

愛と情熱について考えた。江戸の文化と浮世絵がかなり好きな子供に情報を教えてもらい、山梨県立博物館で開催される、芳年展に行ってきた。


初日なので、この展覧会にコレクションを提供してくださった西井正気氏のギャラリートークをお聴きすることができた。


上野での北斎展にも行ったが、今回はゆったりと、1人の天才絵師の多くの作品にテーマごとに触れることができた。
浮世絵は明治20年頃には衰退してしまうので、月岡芳年はまさしく最後の天才絵師なのだ。

西井氏は、京都にお住まい。半世紀前に、芳年に出会い、それから、人生では芳年収集を優先で生きてきた、と語る。
飄々と、しかしどの作品も慈愛の目で眺めては、その物語を伝えてくださった。

絵師の芸術性に、彫り師、刷り師という職人の技。版元の営業力。
江戸に咲いた、庶民に届く文化の華。私は展覧会をこんなに深く堪能したのは初めてかもしれない。
芳年の作品の素晴らしさはもちろんだが、西井氏の芳年への愛と情熱は、まるで運命で出会った伴侶のごとく、冷めることはない、とお話しを伺って思った。

そして今回の展覧会には、先にここで開催された道祖神祭り展も繋がっている。
江戸時代、小正月に甲府城下では幕絵という大きな絵の幕が町々に張り巡らせられ、それは賑やかな祭りだったらしい。広重や北斎も幕絵製作に来たという。芳年も甲府に2度来たことがわかっている。
明治になり、政府により開催を禁止され幕絵のほとんどが消失。
祭りの記憶も途絶えた。
地域の人がどんな文化の中で生きたのか、という伝承も消えた。
私は甲州人なのに、甲州は文化がない、とずっとやや卑下してきた。

いや、あったのだ、伝わらなかったのだ、と今は思い始めている。

山梨の方々にはぜひ、この機会に芳年に触れてほしい。素晴らしい絵とともに、自分たちの今に繋がる歴史があることに気づいてほしい。