生きる-いのちのレッスン-
(CS通信 2010年冬号より抜粋)
昨年7月,祖母が亡くなりました。99歳天寿を全うしての大往生でした。最期は,病院でひと月程手当を受けたのち静に旅立ちました。祖母の介護に寄り添い,いのちの歩みを多く学ばせてもらえたと思います。
また曾孫たちは,老いること,いのちの終わり,いのちのつながりなど,看取りを通して生と死の重さを感じ,学んでいたように思えます。
ライフレッスン
誰にも必ず終わりが訪れます。死にゆく人々から学んだ教えをまとめあげたエリザザベス・キューブラー・ロスの『ライフ・レッスン』に再度目を通してみました。彼女の名著『死ぬ瞬間』や『永遠の別れ』も含めて生きることや,ケアについて臨床に基づく考え,宿る感性に刺激を受けます。
ライフ・レッスンでは,15の人生の学びが説かれています。脳梗塞後の自らの体験も生かしながら,ほんものの自己レッスン,愛のL,人間関係のL,喪失のL,力のL,罪悪感のL,時間のL,恐れのL,怒りのL,遊びのL,忍耐のL,明け渡しのL,許しのL,幸福のL,最終Lがまとめられています。在宅での老老介護から病院での看取り。関わる者にもレッスンがありました。
いのちのレッスン
人間学テキスト第Ⅰ章「生きる」で述べられている愛は自己が他者と合一し,そこに隔たりがなくなった状態です。自己が他者を吸収する過程が生,自己が他者に吸収される過程は死。すなわち愛が生命の充溢と生命からの解放という二つの過程より生まれると説かれています。
生・死・愛。そのつながりと深さが改めて心に響いた時,想いが通じたのか1冊の本,『いのちのレッスン』が届きました。
師であり友人である在宅ホスピス医,内藤いづみ先生と評論家の米沢慧氏との往復書簡。ふたりの書簡は,いのちをかけて生きる厳しくも暖かな姿勢にあふれています。
一人を生きること。私が尊重された生き方に,誰かに支えられて生きること。また,誰かを支えて生きること。そこにいのちをとりまく,つながりや絆が広がるのです。
祖母の最期は,血圧が下がり何度か危篤の状態ありましたが,医療従事者に支えられて,私たち家族はお別れすることができました。想像を超えた生命の力,遺されたものにとってこの時間も大切なものでした。
祖母から学んだいのちの輝き。私自身は,どのようにつなげられるのだろうか。日々レッスンが続きます。
(文 伊藤由紀子)