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他人の魂に手を突っこめるか~スピリチュアルケアに期待と困難が

The Bukkyo Times Weekly 2016年8月4・11日号より。文末に講演に参加した方からの感想文あり。
 上智大学大学院に実践宗教学研究科が今年度より開設されたことを記念してのシンポジウム死生学とスピリチュアルケア」が7月30日に同大四谷キャンパスで開催された。定員をはるかに超える約250人の宗教者・一般人が参加し、スピリチュアルケアに対する関心の高さが示された。

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 3人のパネリストが発題。同大グリーフケア研究所特任教授の鎌田東二氏は、学問には方法、道、表現としてという3種があるとし、それらを総合的に実践し探求するため主体的に様々な問題解決をする実践宗教学の取り組みを評価した。かつ、日本におけるスピリチュアルケアでは、森羅万象に神仏が宿り霊性が備わるという自然観を把握することが重要だとも強調した。

 積極的な終末期在宅医療を実践するふじ内科クリニック(甲府市)院長の内藤いづみ氏は、悔いのない最期を患者に迎えさせる自身の取り組みを紹介。そのその上で、失礼を断りながらもこの35年間で仏教者を必要としたことは1度だけで「宗教家が足手まといになる可能性もある」と、医療の現場と宗教の協働の難しさを吐露した。

 その内藤氏が1度だけ協力を要諳した仏教者の長野県松本市の臨済宗妙心寺派神宮寺住職の高橋卓志氏も発言。ケアワーカー支援者の川口由美子氏の言葉として「同情より人工呼吸、傾聴より体の微調整」を引用。「傾聴というのはカミングアウト。大切な告白をしっかり聴けるほど信頼関係が築けるのか」と疑問を提示。また浅間温泉の廃業旅館を引き取り高齢者のケアホームにしている実践を紹介した。

 パネリストからのやや厳しい意見には実践宗教学研究科の島薗進委員長が反応。「内藤さんの活動は医師でありもはやスピリチュアルなことでもある。それほどのことを自分でやられているのだから他の宗教者が不要なのでは」とし、臨床宗教師の立役者である医師の故・岡部健氏があくまでも宗教者が終末期患者のケアに必要だと主張していたことも解説した。

 高橋氏は「いかにハードルが高いかを知っていただきたかった。他人の魂に手を突っ込んでどうかしようということだからやさしい話じゃない」と真意を明かした。そして今後、安楽死などさまざまな生命倫理の問題が出てくる場で、宗教者が死生観を学ぶ意義は大いに認め、エールを送った。

(参加者より)
暑い日が続いていますがお元気でいらっしゃいますか。
上智大学のシンポジウムでは素晴らしいお話を拝聴させて頂きどうもありがとうございました。先生のお話は厳しい現実を温かさとウィットを込めて伝えてくださる心に深く深く響くものでした。
もっともっとお聴きしていたい思いでいっぱいになりました。