命に寄り添い、支える
(2016年3月4日高知新聞より)
在宅療養をテーマにした地域医療フォーラム「ここがえぃ。ここにおる」がこのほど、高知市本町3丁目の高新ホールで開かれた。件と高知県立大学健康長寿センター主催。約180人が、在宅ホスピス医の講演や在宅介護を経験した家族の報告などを通して、住み慣れた自宅や地域で最期まで暮らすことについて理解を深めた。
甲府市の在宅ホスピス医、内藤いづみさんが「最高に幸せな人生と死の迎え方」と題して講演した。在宅で亡くなるか、入院先で亡くなるかを分ける最大の要因は家族の決意だと指摘。「国が在宅を推し進めるからではなく、家族が自宅で命と向き合おうと決めることが、今後在宅を進めていく上で最も大事ではないか」と呼び掛けた。
90代の女性が、自宅で子どもや、ひ孫に見守られながら臨終を迎える様子を撮影した動画を流した。家族が口々に「おばあちゃん、ありがとう」「ご苦労さま」「ありがとね」と声を掛ける姿に、内藤医師は「在宅で命に寄り添う経験を通し、家族には看取る力が育っていた」と話した。
シンポジウムでは昨年3月、101歳の母を自宅で看取った女性が体験報告。1年4ヶ月の在宅介護生活を「苦労や重いもよらないトラブルにも見舞われたが、訪問診療や看護、介護など多くのサービス提供者に温かく支えられ、母を自宅で見送ることができた」と振り返った。
実際に女性らを支えた医師やケアマネージャー、訪問看護師、ヘルパーも登壇し、「家族が悩みを抱え込み過ぎないで」「サービスに入っている医療・介護関係者に相談すれば、適切な支援につなげてくれる」などどアドバイスした。
体験報告を踏まえ、内藤医師は「チームが命を側面から優しく支えてくれて、命を見事に送り出すことができた」とまとめた。