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子供が心の羽を伸ばすために

毎日が発見2008年2月より

 自分の体のメンテナンスのために、時々整体とストレッチに行く。幼稚園が休みらしく、そこの女性治療師の5歳位の息子が治療室で遊んでいた。退屈をもてあまし、時々母の関心を引きたくて騒いでは叱られていた。
チラッと見ると側に絵本などないようだった。行き場のない小さなエネルギーが渦巻いていた。
「僕は知りたい。僕は見たい。僕は学びたい」と言っているかのように。
 私の講演活動でご縁ができた札幌の高橋さんとは、この数年仲良くして頂いている。彼女は4人の子供が成長した後、自宅を開放し、子供たちのために文庫活動を始めた。前庭が美しいばらの花で溢れているので、自然に子供たちが。ばらのおうち文庫々と命名したらしい。そこでは、子育てサロン、本の貸し出し、読み聞かせが定期的にある。高橋さんの目が行き届いたその空間は、安全でしかも伸び伸びと過ごせる、子供にとって大好きな場所にちがいない。旭川市には石川さんという、これまた素敵な女性が運営する。どらねこ文庫々がある(彼女は現在病気療養中)。
 私自身、本が大好きで育ってきたから、全国の文庫活動の様子を知ると、とても幸せな気持ちになる。子供たちがひと休みしながら、創造の翼を広げられる、手作りで温かな文庫が全国に広がってほしい。地域によって、学童保育や児童館はかなり混雑していて、子供が心身共にリラックスできるようには見えない。子供たちも社会のストレスに晒されて、とてもくたびれているのだ。
 上智大学名誉教授のアルフォンスーデーケン先生が、「人間の尊厳とは、考えることができる、選ぶことができる、愛することができる」と教えて下さった。受験用のマニュアル的な知識の詰め込みでは、自分の頭で考える人間には育たないと思う。
受験が終わった後、彼らの頭の中に何か残るだろうか。
 まずは、時間に余裕のあるおば様、おじ様、おばあ様、おじい様たち、孫や知り合いの幼児が塾に通い始めたり、ゲームに夢中になる前に、絵本の世界を、彼らに教えて下さらないだろうか。85歳の私の母はいつも言う。
 「どんなに年をとっても、誰かの役に立つということが、生きるエネルギーを与えてくれるのよ。ねえ、今の私にできることはない?」と。
 子供たちが本の世界と出会い、心の羽を伸ばしてくれますように……。