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「生きたように死ぬ」

毎日が発見2008年1月より

 
 「在宅ケア」という言葉をよく耳にします。私が「在宅ホスピスケア」という、いのちの最期の過ごし方がある、と伝え始めた15年前、日本では「ホスピス」も「在宅ケア」も初耳の人が大半でした。「自分の家の畳の上で死にたい」という本音の気持ちはあっても、がんになればまず病院で、診断と治療を受け、「治りたい」という希望の元に最期まで入院しているという経過が当時はほとんどでした。
 日本の80年代から90年代は、がん患者に往診してくれる開業医は見当たらず、選択の余地はありませんでした。重症になった段階で退院し医療者から離れた家で安定して過ごすことを皆さんは想像できないようでした。
「がんの痛みを緩和し、家で穏やかに過ごせる在宅ホスピスケアの方法をイギリスで見てきました。次の3つも重要です。①本人と家族の主体的な選択であること②スペシャリストチームが24時間体制で支えること③病院の連携の確保」
 こういうことをいくら力説しても、特に医師グループの反応は否定的なものでした。「がんの痛みがうまく緩和できるとは思えない」「24時間対応は無理」「キリスト教文化がないと成立しないのでは」などと。しかし、私は患者さんとの出会いに学びながら一歩ずつ進め
てきました。現在では国の方針が後押しをして(国は在宅ケアで医療費の削減を目指しています)、全国で少しずつ広がってきています。
  病院経営も数値目標で追いつめられ、今や病院での治療が終了すれば、情け容赦なく患者さんは退院を迫られます。在宅ケアも、ホスピスケアも他人事ではないのです。「生きたように死ぬ」ということは、実は簡単ではありません。しかし、限られた日々であるからこそ、縁ある人々と互いの力を尽くしていのちを囲んだ時、私はいつもそこに「ありがとう」の貴い響きを聴いてきました。これからの連載を通して、皆さまが自分と大切な家族のいのちについて立ち止まって考えて頂けるなら幸せです。