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JAフルーツ山梨「ふるーつふる12月号」より

今年も締めくくりの月になりました。
皆さまの一年はいかがでしたか?人智を越えた自然環境の中で、最高の農作物をお作りになってきた皆さまのエネルギーに感銘を受けた一年でした。

先週、県立の高校に講演に伺いました。事前学習で生徒に渡した課題は

①あなたは人の死について考えることがありますか?
②あなたは人生の最期をどこで迎えたいですか?
③その時そばにいてほしい人は誰ですか?
④あなたは大切な人にどこで最期を迎えてほしいですか?

年末、もし時間があったら、皆さんも考えてみて下さい。そして、それを家族に伝えて下さい。少し勇気がいるかもしれません。この課題に取り組むことが一番大切なセルフケアのスタートになると思います。実に8割近くの高校生が、家族に囲まれて、家で最期を迎えられたら幸せだと答えていました。
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この時期、大根を食べるといつも思い出す患者さんがいます。その方のいのちの物語は聞く方々に大きな希望を与えて下さいます。
この60歳の男性は手遅れのがんと診断され、故郷の長坂に戻って来ました。彼の夢は引退後、故郷の長坂で家庭菜園で悠々自適で大根を作り収穫し舌鼓を打ちたい、という事でした。初めて会った時、それを尋ねてきました。

「俺は育てた大根を抜けるでしょうか?それまでもちますか?」

病気は奇跡的に安定し、娘さんと奥さんの介護を受けて3ヶ月後に見事に大根を収穫することができました。美味しいふろふき大根を食べたと、嬉しそうに私に報告してくれました。やがて病気が進行し、昏睡状態になりました。私は「危篤です」と家族に告げました。身内や親友が集まって病床を囲みました。そして数日。普通はあり得ないことですが、昏睡から目が覚めてきたのです。みんな驚きました。彼が話すのには・・・

「トボトボ歩いて、川のほとりに行った。舟が(なんと渡し舟ではなくて大きなフェリーが)泊まっていた。乗ろうと思ったら美味しそうな酒の香りがプーンとしたので、一杯飲みたいな、と思ったら天井が見えて目が覚めた」

という臨死体験でした。どうも酒好きなお父さんの為に娘さんがお酒で口をぬぐってあげたらしいのです。

「甲州のヌーボーワインでしたか?」

などと私が言うと、みんなが泣き笑いになりました。
その後10日ほど安らかに過ごし(お酒も少しはたしなんで)静かに家で息を引き取りました。
いのちの不思議な物語です。その話を高校生たちにしました。みんな真剣に聴いてくれました。講堂には、当時お母さんのお腹の中にいたお孫さんもいて、一緒に話を聞いてくれていました。何より嬉しいことでした。
いのちのバトンは確かに手渡されていたのです。

みなさん、よいお年をお迎え下さい。