挫折したときに気づく「宝物」
(読売新聞2015年6月12日より)
急に暑くなってきました。皆さん、体調はいかがですか? 体が疲れて具合が悪いと感じた時、実はそこに心の働きが大きく関わっています。
「体は誰よりもあなたの心を知っている、そして病気というのは一番深い心の声である」という観点から、池見酉次郎(ゆうじろう)医師が50年前、九州大学で心療内科(心身医学)を創始しました。
私も医学生時代からこの分野への関心を大切に胸に抱いてきました。ご縁が繋がり、池見先生の高弟である中井吉英先生を京都から甲府にお招きして、心が折れた時、どう回復すればいいのか? 優しさと強さを取り戻す方法はあるのだろうか? と私たちは先生にお尋ねしました。中井先生は「気づくこと」から始まる、と答えました。
①体の声を聴く、よく休養し、息を整える
②夢を持つ
③頭の中で考えない、体を動かしてみる
④自然の声、いのちの声を聴く
⑤自分の人生(物語)は今という時の積み重ねであることに気づく――。
「心が折れた時、挫折した時こそ、生き直す時。実はその時、夢の実現に近づいているのです」と穏やかに語って下さいました。
私もがんで亡くなった患者さんの言葉を思い出しました。「もう、先が長くないとわかった時、自分にとって大切な宝物が何かよくわかった。家族と仲間に支えられて今を生きている。今は最悪ではなく、最高に幸せの時です。人生を生き直すスタートの時なのです」と。