「永六輔の誰かとどこかで」放送終了について
2013年9月2日山日新聞「風林火山」より
山梨県民のラジオ聴取率は、全国的にみてかなり高いと聞いたことがある。果樹農家の作業場や畑では終日、小型ラジオから放送が流れる。マイカー通勤で、スイッチを入れる人も多いだろう。
何と言っても「ながら」で楽しめるのがラジオの利点。お気に入りの音楽や、心にしみる言葉との思わぬ出合いがあり、想像を膨らませることもできる。当方も車での通勤の友になっているが、長寿番組が姿を消すという報を寂しく聞いた。
YBSラジオで放送している「永六輔の誰かとどこかで」(TBSラジオ系)のことだ。タレントの永さんが46年あまりにわたってパーソナリティーを務め、親しまれてきた。
27日の放送で終止符を打つという。
80歳。近年はパーキンソン病と闘ってきた。早口で舌足らずの独特の言い回しは姿を消し、ろれつが回らなくなってきているが、聴取者の多くが永さんの病気や老いを受け止めながら聞いていた感がある。
職人が大好きな永さんは、和紙やすずりの里、はんこの町など、県内の職人との交友をよく話題にした。甲府の桜座を愛し、在宅ホスピス医の内藤いづみさんとの付き合いも長い。2002年まで45年続いた「秋山ちえ子の談話室」と同様、番組で一貫するのは弱者の視点を大事にし、命の尊さを伝えてきたことだ。こうした番組が長く続いたことが、平和な社会を築いた、といったら言い過ぎか。昭和が遠くなっていく。