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最期を支える「仲間」を

2025年1月19日毎日新聞より

毎日新聞1月19日

「ホスピス・在宅ケア研究会やまなし」の定例会に呼ばれて1月12日、甲府市の山梨県立図書館でミニ講演をした。在宅ホスピス医、内藤いづみ先生(68)が代表の研究会。先生と対談もした。
専門職の症例検討の場ではない。四半世紀にわたり、がん患者やその家族、遺族らが「いのち」について学び合ってきた。これまで故・永六輔さんや生命誌研究者の中村桂子さんもここで講演している。内藤先生は顔が広い。

今回のタイトルは「自分らしい生き方、死に方を選ぶために」だった。
私は当欄で繰り返しテーマにしてきた単身世帯の急増のことを述べた。頼る信三k寿賀以内、いても頼りたくない一人暮らしの人が最期に直面する数々の困難について。一方、先生は出会った患者のことを思い出してみせた。難病でもできることは何でも自分でやる「花ばあちゃん」や、点滴のスタンドを介護保険に頼らず手作りする患者の息子のこと。人生の最終盤を、潔く生ききった人たちの物語だ。

家族がいても、いなくても、自分らしく生きるにはどうしたらいいのか。対談では「仲間づくり」が話題になる。すると先生はいきなり、会場の小池ひろみさん(68)を指名した。「ほら、お母さんをみとったときのこと、先駆例として話してみて」
小池さんは20年ほど前のことを振り返った。

父は病院で管につながれたまま亡くなった。そんなの嫌だ。母は家でみとりたい。内藤先生と出会う。母のために別に家を借りた。休職したが、子育てがある。ひとりでは無理。職場の仲間や子供が幼稚園の時に「ママ友」にすがった。「子供の世話で自宅に戻る午後6時から2時間だけ、母をみていてもらえない?」。必死で訴えた。13人が交代でみてくれた。そうして母を、家で送った……。

支えてくれた13人を、小池さんは「癒しのネットワーク」と呼ぶ。いま自らステージ4の肺がんを抱える。最後にこう宣言した。「自分のその時はもっと若い元気な友達もネットワークに誘います!」
ひとりで生きるには仲間をつくるしかない。してあげて、してもらう。内藤先生は言った。「仲間をつくり、一人人地がよりよく生きようと思うことが、未来の希望の切符になります。現実は厳しくても、私、あきらめません!」