上を向いて生きていこう
永六輔さん甲府で闘病生活語る。
山梨日日新聞2013年4月28日より。
2010年にパーキンソン病と前立腺がんであると公表した放送タレントの永六輔さん(80)。11年には自宅で転倒し大腿骨も骨折した。現在、闘病やリハビリ生活を送る毎日だ。そんな中、21日に甲府市中央1丁目の芝居小屋「桜座」で、「生きる」をテーマにしたトークショーに登場した。超満員の観客の心配をよそに元気な姿を見せた永さん。終演後にも自身の生きざまについて前向きな言葉を残していった。
元気な姿を見せる永六輔さん。トークショーでは救急車に運ばれた経験を踏まえ「救急隊員に『大丈夫ですか?』と聞かれるとつい反射的に大丈夫ですと答えてしまう。大丈夫じゃない時は本当のことを言わなきゃいけないですよ」と語っていた
ステージに現れた永さんは開口一番、「リハビリは裏切らないですよ。とてもつらいけれど、やった分だけ自分に返ってきます」と語り掛けた。続けて、病院でのリハビリ体験をユーモアを交え、こう紹介した。インドネシア出身の青年介護士が、日本には良い歌があるから歌ってみたら元気になりますよと勧めてきたという。「その曲は『上を向いて歩こう』だと介護士は僕に言ってきました。知ってますか、と尋ねてきたので、(意地悪をして)知りませんと答えました」
見えない格好良さ
永さんが作詞した曲だと知らないまま、介護士が永さんに付き添い歌う様子を「周りの人たちは、えらいもん見ちゃったなあという顔でいましたね」と明かした。さすがにうそをついたままではいけないと思い、介護士に「実は、あの歌は僕が作ったんだよ」ら白状した。すると「またあ、うそ ついて~」とかわされたという。
知会場が和やかなムードに包まれる中、ゲストである甲府市の在宅ホスピス医内藤いづみさん、甲斐市在住の舞踏家で俳優の田中泯さん、ジャズピアニストの重鎮渋谷毅さんの4人が出そろった。
テーマの「生きる」について永さんの隣で内藤さんは、自宅で最期を迎えた患者のエピソードを報告。「家族の方に余命10日間と伝えました。その後、患者だったおじいちゃんのベッド」の周りで、たくさんのお孫さんが遊ぶ時間が流れ、13日目に『ありがとう』と言って息を引き取りました」。内藤さんは愛情の中で過ごす時間が、この言葉につながったと振り返った。
田中さんは小学校低学年の時に死体を目にし、「命の終わり」を意識するようになったという。同時に、終わりを迎えるまでの「生」の時間がどれほど大切なのかも知ることができた。「今日、永さんはこんなに元気な姿でいる。ということは・・・この場所で見せているすてきな永六輔とはまた違う、人に見えていない時に格好よく生きて(闘って)いる永さんがいるはず」と力を込めた。
若い世代へ励まし
トークショーの間、永さんが作詞した「上を向いて歩こう」や「見上げてごらん夜の星を」といった名曲が、渋谷さんの奏でる端正な音色で流れた。
永さんは終演後、こんな言葉を残している。
「僕よりずっと若い世代にもパーキンソン病は増えています。だからね、(僕が)しっかり話せて頑張っている姿を見せれば、パーキンソン病でも大丈夫なんだよって感じてもらえるでしょ」永さんは、うつむかない生き方を体現している。