在宅ホスピス医として訪問診療
時事通信社 厚生福祉 第5493号より抜粋
山梨県甲府市で「ふじ内科クリニック」を営む内藤いづみ医師。
日本ホスピス・在宅ケア研究会理事の内藤医師は午前中に外来往診を、午後は在宅ホスピス医として外来に通えない患者さんの自宅で訪問診療をしている。
内藤医師にホスピス医療活動への思いを聞いた。
在宅ホスピス医療のきっかけは。
「医学部時代に病院実習を通じて特に感じたのは、がん末期の人たちの苦しさ。体の苦しさもだが、患者さん在宅ホスピス医として訪問診療が孤独だった。患者さんの孤独をどうしたらいいんだろうと思っていたとき、さまざまな縁もあり、ホスピスに到達した」
その緑というのはイギリス滞荏時の。
「一九六〇年代の終わりからイギリスでは社会を巻き込んだホスピスムーブメントが市民活動として発展、ロンドンの下町に近代的なセント・クリストファーズ・ホスピスをシシリー・ソンダーズ女史が造られ、独立型のホスピスが全英に広がり、八〇年代にイギリスに滞在していたときにちょうど花開いた。
それは完全に市民運動という感じで、自分たちの問題ということでチャリティーとして基金を集める人たちやホスピスを啓蒙(けいもう)する人たちが最前線にいた。
日本でホスピスは緩和ケア病棟ということで医療の一環。よって医療制度の中でやらなければいけない。だからどんなにたくさん手や心を掛けたくても経営的に成り立たないということが多々でてくる」
イギリスはチャリティーでできる。
「最初は施設を造ろうと考えたが、経営を考えないといけないのはすごく苦しい。ホスピスは心、体や魂にかかわるケアなので経済活動と直結しないし、金に換算できないのでホスピス病棟を造るのに踏み切れなかった。
ホスピス病棟が病院の中に出来ているので、そこと連携して在宅での活動をしている」
国に対しての要望は。
「国は現在、緩和、在宅ホスピスケアに関してかなり強力に制度を整え、その知識を持った医師を各都道府県で育てようというプログラムが始まりづつある。モルヒネで痛みが緩和できる。
そういう知識のある医師や看護師は増えている。でもモルヒネを使える先生が増えても、思ったほど幸せな人が増えていないのではないか。
痛いから薬ではなく、苦しいという気持ちを持った一人の人間だという意識で向かい合い、きちんとした細やかなアセスメントをすることが不足している」
現在の活動状況は
「午前中は外来をして、午後は訪問診療をしている。危篤になっている方がいるので、なかなか遠くへ出られないが、講演で月に一回ぐらいは遠出をする。
外来では十人ぐらい進行がんの人が通ってきている」
これからどういった取り組みを。
「いろんな苦しみを抱えた方が本当にはっとでき、制度に縛られない場所を小淵沢あたりの空気の良いところで開きたい。
高度な医療的支援が必要になるので、医療機関や家族から懸け離れたところに造ってしまうのはちょっと不都合かなとも思う。
孤独から生まれた活動なので、やはり孤独にはさせたくない」