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死ぬ時に欲しいのは愛

高知新聞2023年8月1日より。)ホスピスは難しいと思いますか?優しくて親切なもてなしの心がホスピスの心です。昔は、ヨーロッパで巡礼する人が病に倒れると、教会でケアされみとられた。お遍路文化と似ていると思います。

新聞記事
私はイギリスでホスピスと出合いました。薬をうまく使い、体の痛みから解放するこのケアを日本で伝えていこうと決めました。
一番の先生は患者さん。
イギリスを離れる直前、亡くなる数日前の人に言われました。
「なぜあなたは点滴を勧めるの?私は点滴より、おいしいスープを一口飲んで生きててよかったと思いたい」
体の痛みも苦しみも、本人じゃないと分からない。この患者さんは大切なことを教えてくれました。

日本に帰ってから、90歳近い女性の主治医にになりました。がんが転移し、1人暮らしでしたが、在宅で過ごすことになりました。
家の中に入ると事情がすべて分かります。患者さんと娘さんとの関係がよそよそしいことが気になりました。小さい頃に離婚し、娘を置いて家を出たことが分かりました。娘は母親のことを憎んでいると感じました。和解は、安らかに旅立つ一つの重要なフアクターです。

会話の中で二人の気持ちが分かったので、私は医者の領分を超えたことを言いました。
「お互い和解したいと思っている。向き合って」。
二人とも泣きながら抱き合い、その日から1週間、本当の母子になりました。

別のおばあちゃんの最期には、家族が大勢集まりました。訪問看護師がベッドの上で行うシャンプーのやり方を教え、孫たちが取り合って頭を洗いました。今日息を引き取るかどうかという人の周りを、笑顔と愛情が囲んでいました。
人が死ぬときには、お金も地位も名誉も関係ありません。死ぬときに一番欲しいのは、家族や知り合いからの温かい愛だと思います。

あんばいという言葉があります。塩の梅。日本人にしかわかりません。この辺で合格っていう、温かくてちょっと中途半端な場所。私は必要だと思います。
この言葉を教えてくれたのも一人の患者さん。認知症で食道がんになり、つらい状況になりました。「病院は嫌だ」という本人の希望で、息子夫婦が一生懸命家で見ました。
その方の支援を考えるためのケア会議が開かれて、本人も参加しました。
会の内容は耳が遠くてほとんど聞こえていないのに、涙を流しながら
「いいあんばいでお願いします」
と言いました。私たちが本当に大事にしなきゃいけないことです。この言葉はすごく心に残りました。
もし、皆さんが愛する人を失い、打ちひしがれた時は、悲しくて苦しくて、1年ぐらいは外に出るなんてできません。でも必ず外に出てみようという時が来ます。それを逃すと、深い闇の中でずっと生きなきゃいけない。

苦しみを抱えていても必ず、自分の人生を取り戻す時は来ます。亡くなった人は皆さんの笑顔が好きです。泣いている姿を見て、幸せだとは思わない。いろんな人を見てきて、私は確信しています。

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