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友達はたくさんいないとダメですか?

やくしん2013年2月号、コドモのギモンのコーナーから抜粋。
小学校5年生の女子からの質問に内藤先生が答えている記事。

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この疑問にかくされた願いは何かな、と思いました。友達の少なさから周りに「かわいそうな人」と見られたら恥ずかしいと思っているのか。あるいは、「友達は大勢いたほうがいい」という周囲の空気に疑問を感じているのか。
 私には、そのどちらからも、「心を通わせられる友が一人いれば、本来は十分なはずだ」という魂の叫び声が聞こえます。
 そもそも、なぜ友達が必要なのか。それは生きる力の源になるからだと思います。
 私は、ホスピスケアという、いのちの終わりに近づいた患者さんの最期を看取る医師になって三十年になりますが、その経験から、人間の本能は、「生き抜きたい、何かを学びたい、仲間によって救われたい」の三つに集約されると思い至りました。特に三つめが一番大切だと思います。
 私の患者さんは、薬によって身体の痛みから解放されると、人生の最終コーナーを曲がる自分と冷静に向かい合えるようになります。同時に、自分がこの世から消えてしまう恐怖に苛まれるのですが、そんな自分を支えてくれるのが、家族や親友です。
 結論を言えば、友と呼べる人は、正直な気持ちを語り合える、ほんの数人、一人でもいいのです。特に、小学校高学年から中学校卒業の年ごろに悩みを共有した友は、何があっても、お互いの生きる支えとなれる、まさに「一生の宝物」になります。
 大人になってからの地位も名誉も肩書きも関係なく、お互いの魂を正直にさらけ出せる親友。私自身、そんな友は中学時代に二人できました。いまはそれぞれ、学校の先生や専業主婦ですが、その二人がいれば、私は「勇気百倍」の思いになります。
 いま親友がいなくても大丈夫。これからどんな親友に出会うかは、あなたが何に興味を持ち、何を考え、何をしているのかで決まると思います。それを教えてくれる一番身近な存在が、自分の家族です。両親やきょうだい、親戚でもいい。そうした人と会話をする時間をできるだけ多く持つ中に、自分のことが見え、親友の像も浮かんでくると思います。その気持ちを大切にして、「親友さがし」をしてみましょう。
 万人に平等に、ごく少人数ずつ、友と呼べる人は与えられているものだと思いますよ。「この人は」という親友が一人いれば、あなたは、「百人力」です。