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片付けで自己見つめる

読売新聞2012年12月13日より抜粋
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 年末になると、誰もが「片づけモード」に入る。私もこの時期、思い出の品々を整理し始めるのだが進まない。特に、子供たちの絵や作品集などを眺めると、「この子たちのかけがえのない宝のような幼年時代を、私は充分見てこなかったのでは?」などと悔恨が浮かび、胸がいっぱいになる。なるほど、「片づけ」はセルフカウンセリングなのかもしれない。

「お母さんは、ホスピスケアと講演と本作り、お弁当作り、よく頑張ったよ」と、子供たちの声がどこからか聞こえてきて少し安心する。そうだ。大切な思い出の品々はやはりとっておこう。

 私は5歳の頃から本が大好きだから、家にも仕事場にもおびただしい本がたまっている。どの本にも愛着があって捨てられない。先日、素晴らしい県立図書館が出来た。これからはそこを大いに利用して、なるべく本を買うのを控えようと思う。

 これまでの全国各地の講演の記録を眺める。北海道、九州、福島、長野、広島、伊勢などの友の顔が浮かぶ。長野の7年ごとの御柱の祭りの熱狂。伊勢神宮の遷宮への地元民の真剣で誇らしい視線。山形のいも煮会。十勝ワインをこよなく愛飲する十勝の住民。どれもが山梨にはない自分たちでこつこつと創り続けるエネルギーにあふれている。山梨の豊かな自然と人との強いつながりに囲まれて、居心地が良くそれが当たり前でのんびり暮らしている私たち。「これがないと生きていけない!」とワクワクし魂にくさびを打ち込まれ、血がたぎる二つとない宝物を身近に育てているだろうか?

 さて、8日には、絵本作家の内田麟太郎さんをお招さして「いのちのことば」をうかがった。全国から友人たちが集まって来て、山梨の自然と食も堪能してもらった。年の瀬は何かと忙しい。もう片付けは止めよう。

 この30年、ホスピスケアを通して学んだいのちの輝きは、私にとって消えることのない情熱である。この山梨の地から周りのみんなに、そして全国へずっとこの情熱を発信していこうと思う。
 少し早いですが、皆さまよい年末をお過ごし下さい。