著名作家ら3人と「いのち」語る
甲府市の荏宅ホスピス医・内藤いづみさん(51)が、著名作家らとの対談集「『いのち』の話がしたい」(佼成出版社、一二六〇円)を出版した。対談したのは、ノンフィクション作家の柳田邦男さん、作家の曽野綾子さん、JT生命誌研究館館長の中村桂子さんの三人。みとりやいのちのつながり、自分らしく生きるということについて、それぞれの体験を踏まえて語り合った。
「豊かな人生の最終章」と題した柳田さんとの対談は、いのちのつながりを考えた内容。柳田さんは、人間関係の過去から現在までを振り返って自己を分析・発見する「内観研修」の体験から、自分がいかに多くの人たちに支えられているかを実感し、人間の魂が身近な人の心の中で生き続けるということに気付いたと話している。
中村さんもいのちのつながりという観点から、人間を含むすべての生物を平等な歴史を背負うものとしてとらえた「生命誌」という考え方を提唱。曽根さんとの対談では「与えてこそ自分も生かされる」をテーマに、自分らしく、自分を失わずに生きることについて意見を交わした。
内藤さんは三人との対談を振り返り「在宅ホスピス医としていのちと向き合う自分自身の原点を見つめ直し、学び返すことができた」と語る。「いのちというキーワードに関して深い意味を知っていた三人。この対談でいのちとは何かという問いの答えを導き出せた」とも。対談時ばかりでなく、本の校正で読み返すたびに、いのちについて学び返すことができたという。
内藤さんは「大人がしっかりとしたメッセージを子どもに与えられなくなっている中で、三人は何もおもねらない、自らの哲学を持っている素晴らしい人たちだった。多くの人に、私たちのメッセージが伝わるとうれしい」と話している。
山梨日日新聞2007年8月14日生活面より抜粋