ホスピスケアを通して患者に寄り添う伴走者でありたい
ニチイの医療外語情報誌Tomoniile2012年3・4号より
「患者の伴走者となって、最期まで見送る医師になりたい」。中学時代からこの思いを抱き続けているという、医師の内藤いづみさん。
終末期患者は、病気による身体の痛みだけでなく、心に不安や孤独感を抱えています。在宅ホスピスではそのような患者の心身の痛みを医療的ケアなどで緩和しながら、住み慣れた自宅で最期を迎え
られるよう支えます。
内藤さんがホスピスケアに本格的に関わったのは、夫ピーターさんの赴任先である英国で参加した研修時。70代の終末期患者が、最期を迎える直前まで旅行を生き生きと楽しむ姿に驚いたと言います。
これまで病院で痛みに耐える患者を見てきた内藤さんは、患者の生き方や人間性を尊重するホスピスケアは理想とする医療のかたちだと感じます。
内藤さんは日本でもホスピスケアを広めたいと、帰国後在宅ホスピスケアを行うふじ内科クリニックを開業。終末期患者の伴走者として様々な支援を行います。
「まずがんの疼痛を緩和します。不安も減り、患者さんの心も穏やかになると思います」。
内藤さんは患者と親身に交流を深めながら、常に心情を汲み取ることで患者の不安を取り除くことに努めています。
また、在宅ホスピスケアでは家族の支えが大きな力になります。患者の異変にすぐ気付けるよう、夫人が毎晩隣で寝息を聞き、子ども達はトイレの介助をするなど懸命にサポートし、今まで通りの生活を送れたことで余命よりも長生きした人もいます。また最期に愛する家族と大好きな天ぷらを味わうことができた人も。
「家族ともっと一緒にいたい、患者さんを支え続けたい。様々な力によって、化学反応のように命が輝き出すことがあります」と内藤さんは笑顔を浮かべます。
「1人で生きているのではないということなど、その人にとっての『たからもの』が見つかるのがホスピスと言えるでしょう」。内藤さんは命に対する絶え間ない情熱と想いが、活動の原動力だと話します。