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幸せになるヒケツ

(ココチ2019年6月号より)30年以上のお付き合いがあるという内藤いづみさんと舩木上次さんとの対談は、とにかく笑いっぱなしの2時間でした。

こちらも山梨トヨタの佐々木さん同様、対談になるのかこちらが心配でしたが、最後は「一人ブータンを作る」という方向に。
それは一体どんなことなのでしょうか。お二人がぶっちゃけすぎて、活字にできないこと多いしということで、ぶっちゃけ具合は、楽しそうなお二人の写真からお察しください。

AI医療は幸せか
舩木 いや-、久しぶりですね。相変わらずお元気そうで。
内藤 舩木さんこそ、手術をしたと聞いていたので、心配していましたが、元気になられましたね。
舩木 おかげさまで。内藤さんとは、もう30年以上の付き合いですね。
内藤 そうそう、このクリニックを始めてすぐでした。最初に会った時、自分と同じニオイがする人だなーと(笑)。
舩木 残念ながら、男女の関係にはなってないけどね(笑)
内藤 あはは、それはなかったですね(笑)舩木さんはどんなに辛い目に遭っても太陽にように明るいじゃないですか、誰に対しても本当に平等に接するので、それがすごいですよ。私の所へ来る患者さんは、大病院を経験している、大病院にも行っている患者さんなのですが、口直しみたいに私の所へ来るんです。みんな私のところへ来て、話しをして「あーラクになった」とか「元気になった」と言って帰っていくんです。
舩木 まさに病は気からだ(笑)。
内藤 私が思うには、医師が患者さんにわかる言葉で説明してないんですよ。だから患者さんも大病院の帰りに私の所へ寄って話を聞いていくんです。
舩木 なるほど。今の医者は患者と話すときには、患者ではなく、パソコン見て話しているもんね。
内藤 そうそう。糖尿病の患者さんは、データの管理が重要なので、糖尿病の専門医がパソコンを見ながら説明はしてくれるけど、一回も目を合わせてくれないと言うんです。
それだったら気を遣わないAIの方がいいってねって言うの。ある糖尿病の患者さんが、目眩がしたと言って私の所へ来たので、「どうして主治医の所へ行かないの?」と尋ねると、「あの先生は血液検査はできるけど、人は診れないもん」というのです。
「内藤先生の所へ来ると、先生がしっかり話を聞いてくれるし、私の分かる言葉で説明をしてくれる、それに、先生の机にはパソコンがないもんね」
と言うんです。
舩木 「人間だから」という部分が飛んじゃって、データだけを見ているんだよね。最近とくに思うのは、医療者、宗教家、教育者はまずは「人間的能力」が先になければいけないと思うんだよね。
内藤本当はそこが一番重要なのに、関係なくなっていますよ。私の知り合いの息子さんが医者になりたいと浪人をしているので、私の本を読んでと渡したら、親子共々断ってきました(笑)。私は、彼が将来どういう医者になりたいか、何で医者になりたいかを考えたほうが良いと思ったので私の本を勧めたんだけど、「内藤先生の哲学はどうでもいい、関係ないのです。とにかく医大に受かって欲しいだけだから」とお母さんが言うんです。
舩木 今の時代、機能や技術だけで育ってしまっているので、どうして医者になりたいか、どんな医者になりたいかは要らないのか。
内藤 そうなんですね。
私はAIが医療の世界に入ったら、まず総合診療科がなくなるだろうなと思っていたら、山梨県内の病院で今年から総合診療科を縮小したり。総合診療科はデータの世界なので。
舩木 なるほど、間違いがないもんね、AIだと。
内藤 間違いがない代わりに感情もないんですよ。AIでは戸惑うグレーゾーンを「ノイズ」と言うのですが、これは人間的感情のことですが、このノイズはAIの世界では消去されてしまいます。つまり、迷わない、戸惑わないと言うことが、間違いがないにつながるそうです。
舩木 人間は感情があるから、迷いながらルールを作っていくでしょう。
まだ色々とルールが決まっていないのに、AIという技術だけが先に来てしまった感じで、皆んな戸惑っているよね。
内藤 今後、今以上にAIは否応無く私たちの暮らしの中に入ってきますが、生や死についての私たち人間だけが持つ「感情」はAIに代わることはできないと思っているので、医師として感情ある診察を行なっていきたいと常日頃思っています。

本当の意味での教養
舩木今の時代は多様化になっているけど、これが正しいという型にはめようにしている気がしてならないよ。
内藤 特に若い人たちは自分の本能を信じられない、自分に自信がないし、自ら選ぶことができないですからね。
舩木 例えばね、何かやろうとすると、「それは消防署の許可を取ってあるんですか?」というようなことを聞いてきて、前に進まないんだよ。
内藤 みんなでやろう!楽しい!ではなくて?
舩木 そう、冒険ができないんだよね。いい子がいっぱいいるけど、どんどん保守的になっていく気がするね。
内藤 フラットに生きている子が多いんですね。異性にも興味ないし、車にも興味がないと聞きますもんね(笑)。
舩木 僕たちが子どもの頃は、周りには色々な人たちがいて、みんな貧しかったけど、いつも大きな声で笑っていて楽しかった。その時代のほうが今より幸せだったような気がするな。
内藤 大きなところの価値観に合わせていた方が楽なんですよ。
舩木 確かにね。世の中には、環境のように変わってはいけないものと、時代のニーズに合わせて変えなければいけないものがあると思うんだけど、僕なんか自分の会社を変えたい、変えたいと一人で言っているけど、周りはそんなにそこまで思っていないんだよね。今のままがいいというか。
内藤 変えるということには、自分自身に「気づき」と「思い」がないと無理だと思いますよ。
舩木 そうそう。今の若い子たちに面白いことを教えたいと思っても、面白いことを知らないからどうやって教えていいかわからないの。
内藤 まさか無理やりキャンプファイヤーをやらせる訳にもいかないですもんね(笑)。最近よく考えるのは、本当の意味での「教養」ってなんだろうと言うことです。
舩木 あ-それなら藤原正彦さんが書いた『教養と国家」を読んでほしいな。
内藤 買ってあるんですけど、まだ読んでないんです。五感で皮層感覚的に感じないとダメだと思うんですよね。あとは本を読むとか自然を感じるとか。地位や名誉、お金では買えないものですよね。
舩木 昔、清里にロックフェラー4世がボランティア活動のために来たんだけど、大富豪なのに、他の人たちと変わらずにボランティア活動をしていたね。海外の皇族や大富豪にも色々な人がいるけど、一般の人達と変わらずにボランティア活動をする、軍隊にも入る、そういうことが教養を作るし、本物のリーダーを作っていくことにつながる気がするね。
内藤 彼らはあらゆることを学び、経験することで、「他人の痛みを感じる」ことができるようになるんでしょうね。それがまさしく「教養」だと思うんですね。

一人ブータン王国って?
舩木 今年清里は開拓帥年なんだけど、僕の祖先は丹波山村出身で、親父やお袋たちも丹波山村から清里へ移住したんだ。先日、丹波山村の村長が亡くなったけど、僕のいとこだったの。丹波山の人たちが「ここには何にもないから」というので、情報も物も溢れたこの時代に何もないことがいいこと、幸せだし、宝物だと話すんだよね。
内藤 ブータンという国は世界一幸福度が高い国だと言われていて、彼らは足ることを知っていて、物を沢山持つことが幸せだとは思ってはいないみたいです。今の舩木さんの話を聞いていると、私たちは、ブータン王国の皆さんのように、足ることを知り、物を増やさず、自然に囲まれて暮らしていることが幸せだと感じるような生き方をする必要がありますね。
舩木 丹波山村はすぐに日本のブータンになれるね。ほとんどを手つかずの自然に囲まれているからね。あとはそこに住む人たちが幸せを感じるかどうかだ。
内藤 私は全国各地に講演会などで行って、色々な県を見ると、自分が生まれ育った山梨県がどれだけ貧しいかがわかります。確かにこの時代だから物は溢れていますが、海のある県は本当に豊かだなと思うんです。
それに比べ山梨県は、急斜面の山や田畑を耕し、葡萄やお米を育て、必死に生きてきた感じがするんです。山梨の人って本当に頑張ってきたんだなとしみじみ思います。
舩木 山梨県人は我慢強いと思うね。僕の親父やお袋も丹波山村から清里へ移住し、何もないところを開拓し、牧場や田畑を作ったけど、本当に尊敬するよね。
内藤 私も山梨県の人たちは本当に尊敬します。
舩木 僕なんかいつも大変だ、赤字だ、儲かってない、儲かってないと言うたびにホラ吹きだと言われるけど、内情を知らない人達が僕のこと幸せだと思っているみたい(笑)。
内藤 舩木さんは実際にはすごく大変だけど、その雰囲気から余裕で幸せそうに見えちゃうし、周りから儲かっていると思われちゃうんですね。
舩木 そう見えるみたい(笑)。
内藤 いつも怒っているとか、悲しい顔をしているではなく、幸せそうに見えるんだもん、それはいいこと。
私は以前、皆さんが集まれる「ひと休み村」という場所を作りたいと考えていたのですが、今は一人ひとりの心の中に「ひと休み村」を作ってほしいと思っています。
舩木さんも.人ブータン王国」を作ればいいんですよ(笑)。
皆さんそれぞれの価値は違うけど、小さな幸せでもいいかから、幸せだなーと思うことが大切ですね。
舩木 今日は久々に楽しかったです。次はぜひ清里で会いましょう。