3月11日に祈りを捧げた
先月看取った患者さんの家に、医療チームが集まり、故人の好きだった
おやつをみんなでいただいた。
奥さんは手作りの名人で、患者さんの希望するものを食卓に
いつも並べていた。
患者さんは、食欲と生きる意欲にあふれ、特にお餅を食べて幸せそうだった。
私たちは内心、喉に詰めるのではないかと、ハラハラした。
肺癌なので時々猛烈な咳が出た。咳の合間にむせもなく上手に食べていた。
餡ころ餅と、からみ餅。黄な粉牛乳寒天。私たちも遠慮なくお相伴させて
いただいたことを思い出し、みんなで泣いて笑った。
納骨式の前なので、療養していた部屋にはまだ祭壇とお骨がある。時々、みんなは
お骨に目をやった。まるで、その方も再会のメンバーであるかのように。
本人の気持ちを繰り返し、聞き取り、確認し、みんなで納得した末の永遠の別れ。
揺れ動く気持ちを支えた家族は、後悔のない顔を私たちに見せてくれた。
こうして、笑顔で再会できたことが、私たちには最高のご褒美でもある。
午後2時46分。黙祷の合図のサイレンが外で鳴った。
みんなで祈りを捧げた。
このメンバーで、この時間を共有できたことを感謝する気持ちでいっぱいに
なった。
講義の準備をしているとこのスライドが目に入った。
死に逝く人への医療の対応
1 身体的な快適度を増す
2 患者が持っている潜在力を十分に引き出す
3 人間関係の安定
4 過去の問題を整理できる
5 与えられている人生のひと時を楽しむ
6 家族のことを考える
この患者さんへの関わりは合格点をいただけたかな、と振り返った。