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死を考えることは、生き方を見つめ直すこと

(ハルメク2019年4月号より)
「『死に逝く自分』が想像できますか?」本著は冒頭、在宅ホスピス医・内藤いづみさんの読者へのこんな投げ掛けから始まります。


「『想像できない』という人もやむを得ません。半世紀前まで人が死ぬ場所は『自宅』だったのに、それが『病院』へと変わっていった。それに伴い、身近にあった『死』に私たちは触れることがなくなってしまったのですから」と語る内藤さん。
しかし今、日本の医療政策は、在宅や地域での看取りを推し進め、「病院では死ねない時代」へと転換期を迎えています。「自分の死、家族の死を家で迎えることになる。
『死は暗い話』と目を背けている場合ではなくなってきているのです」と警鐘を鳴らす内藤さん。「幸せなエンディングのために、どんな最期を迎えたいのかをゆるやかにイメージしておく。この本が、そんなきっかけになればうれしい」

自分の余命を知ったとき「家族の洗濯物を畳みたい」と願い、家で愛する家族とともに穏やかな日々を過ごした女性、花が咲く頃に自分はこの世にいないことを知りながら、「孫のために」と庭に球根を植え続けた男性――。

本著では、親交のあった永六輔さんをはじめ、内藤さんが寄り添ってきた21人の命との向き合い方を紹介。死を考えることは、生き方を見つめ直すこと。
自分らしく生を全うしていった一人ひとりのエピソードから、そんなメッセージが伝わってきます。

エピソードにも登場する母・富士丸さんを本著の上梓直前に看取った内藤さん。「97歳の大往生。家族に見守られ、最期に『はぁーっ』と大きく息をして旅立っていきました。まるであの世への扉を力強く開けるかのようでした」と振り返ります。「母は身をもって『死は怖くない、とてつもない大冒険だ』と私に教えてくれました。私の理想の死に逝く姿は、母のような最期なのかもしれません」
文=小林美香