秋の風景
秋が深まります。
紅葉の葉っぱから差し込む太陽の光はキラキラと輝き、無条件に感動するというか、心を奪われうっとりします。秋は素敵だなあ。
光は命の輝きそのものだからでしょうか?
高齢者を往診しました。何ヶ月か経って、少しずつ親しくなりました。
遠くから、色々な状況で施設に連れてこられた方がほとんどです。
身内も少ない。
混乱したり、怒ったり、沈んだりするのが当たり前です。
会う人、居る場所、見る風景が目新しいのです。
薬でコントロールする種類の感情ではないと私は思って向かい合って
きました。
ここでも私たちの忍耐と観察、共感力が試されます。
感動したので皆さんにもお伝えしたく、プライバシーに配慮して記します。
お一人は、記憶力が衰え、恐らく一時間前のことは忘れます。
どんなに親切なケアをされても忘れます。
ああ、そうだった?そんなことあった?ときょとんとしています。それはあまり焦らない
ようです。
ふと故郷の話しになりました。
青森県なのよ。
方言ありませんねえ。
あら、そう?故郷離れて長いからね。りんご農家だったのよ。
良くおてつだいしたわ。国光とか、紅玉とか知ってる?
はい。小さい頃良く食べました、甘酸っぱくて美味しかった。
そうよね。寒いところだから、りんごの木も蕾も必死で冬を
乗り越えて、春を迎え、咲いて実をつけるの。それはいじらしいものよ。
目がキラキラと輝きました。
その方は今は安全な部屋にいるけれど、冬になったらたまには寒い風に
当たってもいいのに、と思いました。
故郷の寒気を思い出すように。
もう一人は始めは環境の変化に気持ちは大荒れでした。
お身内も少ないようでした。
でも、少しずつ新しい場所に慣れていきました。
私にも心を開いてくださり、先生に会うと懐かしい、と言ってくださることも。
転勤族だったの。色々な地方に行ったわ。
最後は東京。そしてここに。知らない間に年をとったわ。
窓から富士山と櫛形山が見える。毎朝見るとホッとする。
人生の最後に故郷へ戻ってこれて良かった。
先生にも会えたし。
一緒に窓から紅葉を見ました。