開催報告 2010年8月1日 伊勢
自らの意思を書き残しておく「エンディングノート」や在宅医療などを考える市民団体「『終わりよければ』いせの会」主催で8月1日、伊勢市の神宮会館で開催されたシンポジウム「『いのちの対話』ふたたび」、金城学院大の柏木哲夫学長とともにお話をいたしました。
内藤いづみ先生より
8月3日、今年の猛暑は体力をうばわれます。
「なるべくのんびりゆっくりと」
と、人には話しているものの、自分の日程は7月はかなり過密になりました。
7月末はその集大成でした。
7月31日は、朝のTBSラジオ生出演に始まり、立川での講演、そして伊勢神宮への移動。
伊勢についたのは夜の9時すぎでした。
今回で2度目の対談となる柏木哲夫先生はすでにプレイベントとして前泊の参加者たちに向けての「生と死」にまつわる話を終え、参加者たちと懇談を始めていらっしゃいました。
「おわりよければ伊勢の会」という市民の集まりの幹事の皆様のおかげで、伊勢神宮の杜の中を散策し(大汗をかきながら)日本人の心に響く「万物に宿るいのち」の気配を感じたように思いました。
日本にホスピスの歴史を創って下さった柏木先生と今回も身近でお話させていただけたことは本当に光栄でした。
(写真 「終わりよければ」いせの会、会長の遠藤先生)
8月1日の対談はお互いの患者自慢?に走った部分もありますが、今までに2500人もの方を看取った柏木先生がやわらかく、情深く、そしてホスピスケアのプロフェッショナルとしての実力をもちながら自然体でいらっしゃる秘密も少しわかり始めました。
私たち?の対決?がおかげ様で好評で、何と10月には松江で第三回目の対談が予定されています。ありがたいことです。
いのちを学ぶ旅で知り合った友人たちも伊勢に集まり、語り合い、そして西へ東へと笑顔とともに手をふって別れていきました。
伊勢というたくさんの日本人がその昔から集まった場所で、8月1日だけの特別な八朔栗もちをいただきながら、何だか私も今までの忙しさの仕切り直しができ、少し生まれ変わった?ような新鮮な思いが感謝とともに湧いてきたのでした。
以下、参加者からのご感想です
この日のスケジュールは、柏木先生と内藤先生がそれぞれ30分ずつ講演をなさったあとに、対談が50分、質疑応答が30分というものでした。
柏木先生は「ホスピスのこころ」というテーマでホスピスの意義や、全人的な傷み(トータル・ペイン)について説明してくださいました。内藤先生のテーマは「えにしを結ぶケア」。たとえ患者さんが亡くなってしまっても、そこで生まれた出会いや縁はどこかでまたつながっていくことを教えてくれました。
対談では、内藤先生がカルタにちなんだ患者さんとのやりとりを披露すると、柏木先生は患者さんとの川柳の交換風景をユーモアたっぷりに話してくださり、笑いの渦が巻き起こりました。
柏木先生が日本でホスピスをスタートしたのは1973年だそうです。当時はホスピスという言葉が知られていなくて、「新種のホステス?」と勘違いされたとか。それから40年近く経ち、今では広く浸透しています。そして、内藤先生は在宅ホスピスというケアを広めてくれています。お二人が切り開いてくれた新しい道。私はどんなふうに関わりながら、歩いていけばいいのだろう。そんなことを考えさせられた講話会でした。内藤先生、この出会いをありがとうございます!
前日のラジオ番組で、医者嫌いの永六輔さんが「ほとんどの医者は説明不足。内藤先生のような医者ならいいのに……」と力説。
今回の対談では、柏木先生が「内藤先生とご一緒すると元気がもらえる」とニッコリ。
その柏木先生は患者さんに「いかがですか?」と声を掛ける。それは、「はい」とか「いいえ」で答えられる質問では、そこで会話が途切れて、患者さんは言いたいことを言えなくなってしまうから。
そして内藤先生は患者さんに「今、何がしたいですか」と問い続けてきた。
お二人は「医者は臓器を診るだけではだめ。患者さんの物語に耳を傾けなさい」と教えてくれる。
苦しんだり、痛んでいるのは病人だけではないはず。私にだって、耳を澄ませば、聴こえてくる声があると気づいた。耳をふさいだり、聞こえないふりをしていたのは私だ。
個人の中の身体と精神と魂、それを結ぶものが「いのち」という社会性であるように、私は聴講いたしました。
講演の対談はとても面白く、体験から培われた深い言葉が愉快に響きました。切り口が違うからこそ共通した大切なことがより分かりやすく現れていたと想います。
お二人とも、懐が深く面白くて、動じないしなやかさがある…それが、ホスピスケアにはとても大切な「人間力」の現れだと思いました。
相手の想いや、その人自身のいのちの輝きをを尊重している…ホスピスの現場でも、講演会の現場でも変わらずに流れている、深い愛だなぁと思いました。
お伊勢さんらしく、キラキラとあたたかい空気をたっぷりと満喫しました。
ありがとうございました。