宝くじ売り場(北海道新聞10月21日より)
先日、「生と死を考える会」の講演会に出席した。
本当はひとりで行くつもりだったが、中二の娘も去年の冬にホスピスの本を読み、興味があるというので一緒に行くことにした。
在宅ホスピス医の講演や、パネルディスカッション、そしてがん末期患者の最期のときがドキュメント映像で流された。
少し娘には難しいかなと思ったが、じっと聞いていた。
講演会が終わり、二人でバスを待っていると娘が突然「お母さん、病院に宝くじ売り場ってないの?」と聞いてきた。「宝くじのコマーシャルで『夢を買おう』って言ってるよね。宝くじを毎週1枚買ってね、当選発表まで頑張ろうって思うの。当らなかったとしてもワクワクするでしょ。がんの末期患者さんが当選発表までは生きようって希望を持てたらいいのになあ」
私は娘のとっぴな発想に驚いた。最近は大きな病院にコンビニやコーヒーショップができているが、宝くじ売り場というのは聞いたことがない。
娘は講演を聞き、自分なりに患者さんが最期まで希望を持って生きられるようにと考えたのだろう。
娘は将来看護師になりたいと言っている。娘が看護師になる頃には宝くじ売り場のある病院ができているのだろうか。そしてそのころまでにはこの街にもホスピスができてほしいと思いながらバスに乗った。
北海道新聞 2007年10月21日より抜粋(文 上西 紀子様)